都市部では郊外や地方に比べて土地価格が高いことやそもそも土地を確保するのが難しい場合が多いため、大きな住宅を建てるための広い土地が利用できません。
このような広い土地がなくとも、多くの部屋を確保することや自家用車のための駐車場を設置するために土地の有効活用を行える、3階建ての住宅が注目を浴びています。
今回は注文住宅における3階建ての家のメリットとデメリット、3階建て住宅ならではの間取り事例について紹介し、3階建ての注文住宅を失敗しないようにしましょう。
□3階建てのメリット
*階ごとに生活用途を作ることができる
一階は耐震強度を上げるため壁を多く設置する必要があるため、水回りであるトイレや風呂、洗濯機置き場、物置である納戸や車庫などを設置することが多いです。
二階には生活空間の中心である、リビングやキッチンの共同スぺ―スが設けられます。
三階には寝室や書斎、子供部屋といった個人スペースが置かれることが一般的となっています。
一般的な3階建ての住居は、共同スペースと個人スペースが階ごとで明確に分けられているため、メリハリのある生活空間ができます。
*3階建ては日当たりを確保しやすい
3階建て住宅は基本的に狭小面積の土地に建てるのが一般的です。
そのため、隣の家同士と接する面が多くなってしまいますが、3階建ての場合では窓やバルコニーを高い位置に設置することで好条件な日当たりを確保できます。
また、周囲の戸建て住宅に比べて高さが高いので展望の良い景観も望めます。
*土地の有効活用ができる
少ない土地に多くの部屋が設けられます。
都市部の場合は郊外に比べて、地価が高く利用できる土地に限りがあるため、階層が高くなるほど多くの部屋をつくれます。
また、駐車場を利用するために土地を確保しなくても良いため、土地代を他に充てられます。
*3階建ては間取りの選択肢が増える
1階を全てガレージにすることで、屋内駐車場に加えて趣味部屋をつくることができます。
他には、2階と3階を吹き抜けで繋ぐことで、天井の高さを上げ、開放感のあるリビングを作ることができます。
また天井が高い分、窓の位置も高いため部屋全体に光量を確保できる間取りになります。
他の選択肢としては、二世帯住宅に向いている間取りをつくれます。
一階と二階にそれぞれキッチンやトイレを設けることで階ごとに独立機能を持たせられます。
そうしたことで同じ住居の中で独立した二世帯住宅に住めます。
□3階建てのデメリット
*建設費用がかかってしまう
構造上、3階建ての住宅は1階部分に建物の重さである’’荷重’’と地震が起きた時に建物に働く力である’’地震力’’が大きくかかってしまいます。
つまり、3階建ては1階部分に大きな負荷がかかるため、安全性の都合上、マンションやビルに利用される構造と同等の構造で建物を設計する’’構造計算’’が行われます。
そのため、木造2階建てには算出義務のない構造計算費用が’’20万円’’ほどかかるため、3階建ての住宅は追加で費用がかかってしまいます。
他には、建設予定地の地盤の影響によって建物の安全性が大きく左右されるため、土地の地盤を安定化させる’’地盤改良’’に費用がかかってしまう場合もあります。
地盤改良には、土地の表面を整える’’表層改良’’と地中深くまで支柱となる杭を差し地盤を安定化させる’’鋼管杭工法’’の2種類があります。
・3階建てに利用される床面積60坪の地盤改良費
・表層改良費:120万から150万円
・鋼管杭工法費用:240万から300万円
*建築法による制限が多く存在する
住宅には高さ規制や周囲の日当たりを遮らないための日影規制があります。
3階建てで高い天井を確保しようとすると、建物の高さが上がってしまい’’10メートル’’を超えてしまうと日影規制による高さ制限がかかります。
他には、近隣住宅の採光を遮ってしまい、近隣住民とのトラブルになりかねない場合もあります。
高さ規制には「第1種・第2種低層住居専用地域」という都市計画規制があり、その地域一帯に建物に対して10メートルまたは12メートルの’’絶対高さ制限’’と敷地境界から建物を1メートルまたは1.5メートル離さなければならない’’後退距離制限’’がかけられます。
この都市計画規制は開発規制の中でもかなり厳しいものなので、土地を購入する際や建築予定地の地域規制については入念にリサーチしておきましょう。
そのため、開発規制や地域ごとの規制によって、自分の思うような住宅をつくれないということを理解しておく必要があります。
*室内の上下階移動が不便に感じてしまう
3階建て住宅であるため、どうしても上下階の移動は負担になってしまいます。
建築前に入念に検討しなければ、3階を利用しなくなったり、大規模な改修工事を行う必要が出てしまいます。
将来的に移動の利便性を向上させるリフォームを行う前提ということを考慮する必要があります。
具体的なリフォームとして、ホームエレベーターの設置による上下階の移動の利便性を上げることはできますが、導入コストやあらかじめ設置するスペースを確保する必要があります。
また、2階建てに比べて余分に階段を設けなければならないため、階段スペースや階段下に無駄な空間ができてしまいます。
階段の活用法としては、踊り場部分を広くつくることで簡易的な書斎やワークスペースにするなど、活用次第では利用価値の高い空間になります。
*冷暖房効率が悪い
冷暖房の基本として、暖かい空気は上に向かい、冷たい空気は下に向かいます。
建物の高さがある分、冷暖房効率が悪くなってしまうため、必要以上に冷暖房費における電気代がかかってしまいます。
対策として、階段と部屋の前に仕切りを設けるか、天井に取り付けて空気を循環させる’’シーリングファン’’の導入が考えられます。
□3階建て住宅を活用する間取り
上記に3階建ては間取りの選択肢が増えると書いた通りに、3階建て住宅には工夫次第で様々な活用法があります。
*リモートワークに対応した職住一体の間取り
1階部分を完全に仕事部屋もしくはオフィスとすることで、家の中でもプライベートと分けながら仕事を行えます。
仕事とプライベートを明確に分けられるため、仕事までの気持ちの切り替えや業務の効率も上がることにつながります。
*露天風呂を取り入れた開放的な間取り
3階や屋上部分に浴室や露天風呂を設けることで、展望の良い風呂を楽しめます。
3階に設置するため、周囲からのプライバシーも確保できるため、快適な時間を過ごせるでしょう。
*ガレージを設置した趣味部屋のある間取り
1階全てに屋内ガレージを設けることで、天候に左右されず、趣味の車やバイクいじりのDIYを楽しむことが出来ます。
また、室内であるためシャッターや施錠扉を取り付けることで、車やバイクの盗難対策にもなります。
□まとめ
2階建て住宅と比較して、土地代も含めた全体の建築費用では3階建ての住宅の方が土地の価格を抑えることができます。
また、義務化された構造計算や地盤改良によって耐震性や耐火性が向上するため、結果として災害に強い家に住むことになります。
住む上でのデメリットも多い3階建て住宅ですが、自分たちの工夫次第では理想のこだわりを実現できる注文住宅となります。
何事においても言えることですが、3階建ての注文住宅を購入する際には入念な計画と住み始めた後の将来設計を行うことを徹底して、理想のマイホーム生活を送りましょう。